「思い立ったが吉日」とあるが、そんな甘い世の中ではない。part1
2015年、大学2回生の7月。
友人・佐藤君の家で私は進撃の巨人を読みながら言った。
「なあ、さとー。日本一周したいな」
何を言ってるのだ私は。なにせお互い、大学の硬式野球部に属してる。もうすぐ、公式戦だ。僕はキャッチャーで彼はサードだ。抜けたらチームに迷惑だろう。第一に、私には彼女がいる。彼女をほったらかして、長期間も遊んでる場合ではna..
佐藤:「よし、行こう!」
うん?佐藤は、今なんて言ったのだろうか。
私のあまりに浅はかで思いつきのアイデアを採用したのか。いや、聞き間違いであろう。聞き間違いであってくれ。佐藤!
佐藤:「でも今お金ないんだよなあ。10月から後期始まるし」
私:「ヒッチハイクなら、0円だ。しかも自転車なんかより楽で早いはず。2ヶ月あれば後期に間に合う。」
佐藤:「決まりだな!来週からどう?シフトまだだよな」
私:「おう、そうだな。まだシフト出してない。来週から行くか。」
言ってしまった。お互い同じ店舗のすき家のバイトだ。シフトのシステムも熟知している。すぐ出発日が決まってしまった。これはもう行くしかない。
彼女に何て言おう。野球部のみんなには?残り7日間しかない。片っ端から片付けていくぞ。
私:「キャプテン、この夏で日本一周したいです。来週で辞めさせて頂きます。」
キャプテン:「うむ。やりたいことをやれ」
私:「日本一周したいだよね〜。いいかな?」
彼女:「うん。。もう別れよう」
あっさり、この街への未練がなくなった。
引き止めてくれるかなぁ〜ぁあ!!と思っていた自分をはたきたい。
そして出発日。
初期装備は3つ。
自分の生身、佐藤君、スケッチブックだ。まるでドラクエだ。RPGだ。
美しい晴天。カーテンを勢いよく纏め上げ、トビラを蹴り上げた。私たちは学園都市駅を飛び出した。
お金もない、土地勘もない、スケッチブックはある。
猛烈に目的地を殴り描き、私たちは道路に立った。
5時間立った。5時間経った。
これからの1週間は地獄だった。